人が品質をつくる。 衛生調査で最難度「ランクS」取得の達成を支えた現場改革
富山工場が衛生調査で最難度「ランクS」を4か月連続取得。人材不足の時代に実現できた現場の意識改革とは。
「食品製造業における生産性向上等の実態調査(令和6年度)」によると、経営課題として、「人材の育成・確保」をあげる企業は65.6%に上り、多くの企業が課題としてとらえていることがわかります。
食品製造業界では、人材確保や育成に加え、現場で働く従業員の意識変革をいかに促すかが重要な経営課題となっています。株式会社AIVICK(アイヴィック、以下、AIVICK)の富山工場における衛生管理の向上に向けた取り組みと、現場で進めている意識改革についてご紹介します。
工場はフル稼働のなか、最上位難易度に挑戦する
無添加調理による宅配惣菜の定期購入サービスを展開するAIVICKの富山工場では、民間衛生検査機関の衛生調査を毎月1度導入しています。その調査で、最上位難易度の「ランクS」を4か月連続で取得しました(2026年4月〜7月)。
分厚い専用のマニュアルを整備したわけでもありません。衛生管理の専門家を採用したわけでもありません。工場長の宮森 直幸と現場リーダーの伊藤 晶に何をしたのかを尋ねると、返ってきたのは「働く人ひとり一人の意識の変化だけなんです」という言葉でした。では、この1年で何が変わったのか。現場の2人に振り返ってもらいました。
そもそも「ランクS」とは
富山工場は、2016年から稼働しているAIVICKの自社工場です。無添加調理の惣菜・弁当を製造する自社工場です。パートスタッフや技能実習生を含む、10人ほどの従業員が働いています。AIVICKの「シェフの無添つくりおき」や「#100meal」をはじめとするFIT FOOD事業受注生産による製造が中心のため、事前に注文数、製造数が決まっているので、8時~17時まで従業員はほぼ同じ時間帯に勤務しています。それに加えて試作品の調理・盛付の検証、他拠点の製造や盛付不足の緊急対応があり、現場はいつもフル稼働で、人員数にもそれほどの余裕がない日もあります。
富山工場が受けている衛生検査は、民間衛生検査機関による月1回の衛生調査です。ふき取りによる菌の検査、調査員の目視、帳票の確認を組み合わせ、その総合点でランクが決まります。
この種の衛生調査は年1回程度という現場も少なくありませんが、AIVICKの富山工場では衛生面の強化や社内の衛生観念を徹底するため、毎月検査を受けています。
始まりは、現状の確認から

AIVICK富山工場
現場リーダー 伊藤
転機は2025年8月、毎月の衛生調査が始まったことでした。
現場リーダー・伊藤 「検査は、ふき取りの菌検査を中心に、また、帳票のチェックとして、加熱や冷却の記録もあり、抜けがあると大きく響きます。検査結果には指摘事項がちゃんと書かれていて、とてもわかりやすいので、まずそこを現場で確認していきましょう、というところから始まりました。
あわせて取り組んだのが、1日の作業の流れです。これまで製造が終了したら清掃に入るという流れから、固定の清掃時間を作った勤務時間と製造体制に変えました。製造は遅くとも16時に終え、17時までの勤務者が片付けに入ります。
いまでは、余裕のある時は普段手の届かない場所も掃除するという意識に変わりました」
「してね」という指示ではなく、理由を伝える
清掃の業務時間が設定されても、やり方が変わらなければ結果は変わりません。伊藤が意識したのは、指示ではなく理由、得られる効果を伝えることでした。
伊藤 「「掃除してね」「洗ってね」と言っても、理解できないんです。たとえば、作業が終わったら台を拭く。だから、どうして拭かなければいけないのかを徹底的に説明しました。菌は目に見えないし、水拭きだけでは菌は消えない。だから継続的に拭かないといけないよね、きれいな台の上で作業したいよね、と。慣れるまでは、ずっと声がけをしていました」
富山工場では勤務歴の浅い外国人技能実習生2名を含む、経験、知識、勤務経験歴の異なるメンバーが働いています。言葉だけに頼らない伝え方も工夫しました。
伊藤 「言葉で通じなかったら、態度で示す。できてなかったら、やり直してもらう。彼らからすると、厳しさもあるでしょうが、私たちが、お客さまにお届けする商品を担当するのだという責任と重要性を説明します。そして、「こうやって(機械を)洗うんだよ」と見せて教えて、もう一回やってみて、と。最初は私だけが何度も話して伝えていたので、彼らからは本当にうるさい人だと思われていたと思います。今では、他のパートさんも、彼らの自らチェックしてくれるようになりました。私はチェックが細かくて洗浄後でも汚れを見つけたら、やり直し。今では、私が言わなくても、パートさんが自らチェックして、教えてくれる、チームになったことが大きな成長だと思います」。
指導、というほどのことではなくて、やり方を教えるだけ、という伊藤ですが、その繰り返しにより、少しずつ現場の従業員たちも、いかに「早く丁寧にきれいに」するのかを考えるようになりました。
外国人技能実習生の声:PHAN HUUHUYさん

AIVICK 富山工場 PHAN HUUHUY
毎月のミーティングの後、Sランクが取れていると周りの人が楽しそうです。自分の母国の飲食店で働いたことはあるが、ここまで衛生面に厳しくはなかった気がしていてます。文化の違いは感じますが、皆さん熱心に教えてくれますし、自分も作業を丁寧にかつ早く進めたいと思います。
初めての「S」が、自信になった

AIVICK富山工場 工場長 宮森
2025年10月、富山工場は初めてランクSを取得します。工場長の宮森は、現場の空気が変わった瞬間を2つ挙げました。
工場長・宮森 「毎月調査が入るよと言われた時と、初めてSが取れた時です。調査が入るという言葉でスイッチが入って、次にSを取った事実で、現場の空気感が変わった。そうなったら、みんなが、「もうランクを落としたらダメだよね」とおのずと意識がさらに高くなるんです」
伊藤 「最初にSが取れたのが、みんなの自信になったのかなと思います。段階的にきれいになっていって、今は誰が見ても恥ずかしくない、と言えるところまで来ました。いまは逆に片付いてないものが目立つようになるんですよ。そうしたら、みんなが気づいて、掃除や片付けに自ら動いてくれます」
この1年でいちばん大きかった変化は、設備でも道具でもなく、気づく人、自ら動く人が増えた、現場の空気感でした。
月1回のミーティングで、意見が出るようになった
富山工場では毎朝、製造に関するミーティングを実施しています。そのミーティングとは別に衛生調査の結果が出たあとに、月1回のミーティングを開いています。
伊藤 「ここを指摘されたよね、直さないとね、と。それから、他に気づいたことはある?と聞くと、みんな自分の意見を言うんですよ。実習生、パートさん、社員と立場を気にせず、みんな前のめりに意見を出してくれる。心からすごいな、と思います」
宮森 「ミーティングが終わった後に、そこを重点的に掃除するんです。「ここやらないとね」「こっちやるね」と、お互いに声がけをしています」
清掃道具についての提案も出るようになりました。「この道具がいいと友達に聞いた。買ってきて」「これだと小さいから汚れが落ちにくい。こっちが欲しい」とパートさんからの意見で、社員が買い出しに。
現場で意見を出し合い、立場に関係なく試行錯誤を続けています。
工場の衛生を保つために、そしてお客さまの安心のために、心を込めて掃除をします。
他の拠点から、見学が来るようになった
ランクSの取得後、富山県内にある複数の製造委託先(OEM先)から見学の申し入れが入るようになりました。
事業成長とともに委託先工場も増え続けている中、直近では2社が富山工場を訪れ、1社がリモートで参加しました。
宮森 「実際の現場の空気感を見たいから、と来られて。ミーティングの様子も、工場内も見ていただきました。その後、「うちらも取るぞ、頑張ろう」という雰囲気になっていますよ、と聞きました」
伊藤 「私たちは大それたことをしているわけではないんですよ。だけど、声かけ、説明、話し合いを継続的にやることで、みんなの意識が着実に変わってきています」
人が品質をつくる
この1年、富山工場に導入された新しい設備はありません。増えたのは、気づく人、周りに声をかける人、意見を出す人、自ら動く人の数でした。
「大それたことはしていない」。2人が繰り返したこの言葉は、裏を返せば、大それたことをしなくても現場リーダーの動きや声がけでチームは変わりうる、ということでもあります。

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株式会社AIVICK 経営企画部 広報担当
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