AIVICK × GLIN Impact Capital〜
セオリーオブチェンジ策定で見えた、
食と健康のエコシステム改革の道
Interview Members
AIVICK 代表取締役
矢津田 智子
サービスやプロダクトの設計・改善を担い、食とテクノロジーをつなぐ仕組みづくりに向き合っている。
GLIN Impact Capital株式会社
マネージャー
大谷 はんな
事業全体の運営や新しい取り組みの立ち上げに携わり、現場の視点を大切にしながら事業の成長を支えている。
AIVICKが届ける社会変化とは
矢津田 智子
私たちは、人を健康にし、人を幸せにする「食」を提供し続けています。ただ、その軸となる価値観については感覚的な部分が多かったのです。今回、GLINの支援のもとでセオリーオブチェンジ(以下、TOC)の策定に取り組むことで、自社の事業活動と社会課題解決への取り組みによる結果とは何かが言語的に構造化でき、とてもありがたかったです。ありがとうございます。
大谷 はんな
AIVICKは、既存の食品業界の前提にとらわれずに「社会課題をどう解決するか」を真正面から考えている、希少なスタートアップだと感じています。今回、ロジックモデルで事業とインパクトを整理する中で、AIVICKが健康改善だけでなく「自分で健康を管理しやすい環境づくり」まで視野に入れていることが明確になり、強く印象に残りました。食と健康のエコシステムを変えようとする姿勢と、必要な仕組みを着実に追求している点が特徴だと感じます。
矢津田 智子
私たちが目指すのは、食を通じてより豊かな人生を送れる社会です。先代のおかげで、いつでも好きなものを好きなだけ、制限なく自由に、本能の赴くままに食べることができる時代になりました。長持ちしますし、価格も手頃でボリュームもあります。とても有難いことです。しかし、食の自由は新たな課題として、新型栄養失調、生活習慣病を生みました。私たちはその課題に取り組みたいと考えています。私たちが目指す社会変化は、個人の嗜好と目的などの多様性に合わせて、必要な栄養面や食事の質、量、タイミングなどを、個人が自然に無理なく最適にできるようになるというものです。それによってより豊かな人生を送れるような社会となることを目指してます。
価格競争が生むひずみと工場の持続性。TOC策定で見えた食の社会課題
大谷 はんな
「女性のQOL」「生活習慣病」に加え、消費者の選択肢の少なさや食品工場の持続性といった多層的課題を事業とどう結びつけるかの議論はとても興味深いものでした。特に、社会の「安さや利便性の追求」が生む実態や、悩みを食で解決したくても難しい現状、「本来価値の高い食品」という表現に至るまでの議論は何度も行き来しました。
矢津田 智子
「食」の背景にある多層的な課題を4つに絞り、言語化する工程はとても大変でした。特に「本来価値の高い食品を製造する工場の持続可能性」は、当初、自分たちでも言語化できていなかった領域でした。しかし事業を進めていく中で、社会全体の食の構造の歪みを実感してきました。安さや利便性を追求する余り、研究開発費や工程を減らす食品添加物に頼った加工が進み、工場の独自性も減り、画一化され価格競争力がなくなり、厳しい状況に置かれています。TOCでこの構造を整理したことで、結果的に、私たちの事業が工場の持続性にも寄与していると気づけたのは大きな収穫でした。
大谷 はんな
インパクトの規模を広げるには経済的な成長も重要です。AIVICKは工場と対話を重ね、適正な利益が得られる状態をつくろうとしています。地方雇用の拡大は地域活性化につながり、本来価値の高い食品が安定供給されれば消費者の選択肢も広がります。健康的な選択をしやすいエコシステムには経済的基盤が不可欠で、AIVICKがその点も重視していたことが現在のビジョンにつながったのだと思います。
実験データで裏付ける“寄り添う食事”。個別化の基盤となる検証プロセス
大谷 はんな
AIVICKは、大学や病院と共同で、血液、尿、酸化度、腸内細菌叢(そう)などを計測する実証実験を継続しています。ここまで定量的に健康影響を分析している食品企業は稀だと思います。
矢津田 智子
無添加の食事を継続すると、腸内環境がどう変わるのか。また体重や体組成、血液や尿にどんな影響が出るのか。AIVICKでは、科学的な実証を大切にし、継続的な調査で得られたデータをもとに、食事を設計しています。
大谷 はんな
商品発売前の段階から社員も対象にトライアルで検証を重ねている点も素晴らしいと思います。今後も検証は進むと思いますが、AIVICKの食が健康だけでなく生活満足度にも影響し得る点は重要なポイントとしてTOCで整理しました。
矢津田 智子
私たちのビジョンに「優しく人に寄り添うフードテクノロジー」という言葉があります。食事管理は本来ストレスが大きく、意識して続けるのは難しいものです。だからこそ「自然に続けられて、意識しないうちに健康になれる」状態を目指しています。
事業会社、大学や病院との連携によって、最適な食事とはどんなものなのか? 個別最適とは? の方法論を共同研究しています。その方法論に則って食事を摂られたときの変化をデータ共有いただき今後に繋げていきます。
さらなる高精度の個別最適化と自社工場への展望。広がる複合ソリューションの芽
矢津田 智子
TOCを策定する中で見えてきた課題は「個別最適化」です。私たちが最適化する対象はグループと個人。現在は、家族、個人に最適な食事が届く仕組みをつくっています。
その中で重要なのが、個別最適化の製造が可能な工場と最適食を保管出荷するための倉庫です。時代の変化に伴い、個々人のDNAレベルで摂取適性が分かったり、腸内細菌叢(そう)から体質などに合わせて、最適な食事がわかったりと、最適食は確実に存在します。だからこそ、そういった情報に対応可能な生産・出荷ライン構築に向け、工場の設備開発が今後の大きなチャレンジになります。この次世代の最適食工場を国内外に展開することも視野に入れています。食を「人生を幸せにするソリューション」として届けるには、機械・ソフトウエア設備の大きな進化が必要です。
大谷 はんな
一つのスタートアップがこれだけ社会全体の在り方について明確なビジョンを持ちながら、インパクト実現へ向けた活動を進めている点は多くの方に見ていただきたいですね。目指す変化が明確で、必要な検証にも積極的に取り組まれていることは大きな評価ポイントだと思います。個人としてもAIVICKは利用していますし、周囲にも紹介したい。GLINとしても、投資家との橋渡しや、新しい事業が形になった際のインパクト評価などの支援ができればと考えています。
矢津田 智子
ありがとうございます。今回のGLINとの取り組みで言語化できた道筋をもとに、「食が人生をより豊かにするソリューションとなる」ように、これからもAIVICKは国内外の展開を強化していきます。GLINと連携しながら、その歩みを加速させていきたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。